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藤田 全基*; 松田 雅昌; 片野 進; 山田 和芳*
Physical Review Letters, 93(14), p.147003_1 - 147003_4, 2004/10
被引用回数:24 パーセンタイル:72.09(Physics, Multidisciplinary)電子ドープ超伝導体PrLaCeCuO(x=0.11 and 0.15)の静的なスピン相関に対する磁場効果を中性子散乱によって調べた。反強磁性と超伝導の相境界に位置するx=0.11ではゼロ磁場でT以下の温度において格子に整合した磁気秩序が観測される。磁場を印加するとこの磁気秩序は増強され磁気強度と磁気秩序温度が約5Tで最大になるが、その後は9Tまで徐々に減少することがわかった。一方、x=0.15ではゼロ磁場でも8.5Tの磁場下でも磁気秩序が誘起されない。これらは磁場で反強磁性が大きく増大した後に飽和するホールドープ系超伝導体の振舞いと対照的である。この結果は、反強磁性の磁場効果が系の磁気秩序形成の不均一性と関連があることを示唆していると考えられる。
松田 雅昌; 藤田 全基*; 山田 和芳*; Birgeneau, R. J.*; 遠藤 康夫*; 白根 元*
Physical Review B, 66(17), p.174508_1 - 174508_6, 2002/11
被引用回数:11 パーセンタイル:50.69(Materials Science, Multidisciplinary)これまでの中性子散乱実験の結果から、LaSrCuO低ホール濃度領域(0x0.055)のスピングラス相においては斜めストライプ構造を反映していると思われる静的秩序が存在することがわかっている。われわれはこの相でどのような磁場効果が見られるかを調べるために中性子散乱実験を行った。x=0.014, 0.024の試料における磁場効果(H//CuO面)を調べたところ、磁場の増加とともに磁気反射強度が徐々に減少することがわかった。系統的な実験を行った結果、これはLaCuOで見られるような非対称(Dzyaloshinski-Moriya)相互作用に起因している可能性が強いことがわかった。つまり、磁場中でスピンの回転が起こりスピン構造が変わるために、(1, 0, 0)付近の強度が減少していると考えられる。この結果はスピングラス相においても一軸性の磁気異方性が存在することを示している。また、磁場中で非整合磁気ピークの非整合度やピーク幅がほとんど変化していないことから、この非整合性は磁気相互作用に起因するのではなく、電荷秩序によって引き起こされている可能性が強いことがわかった。上述の磁気相互作用はスピンの方向を決定したり静的秩序を安定化するために働いていると考えられる。
松田 雅昌; 片野 進; 上藤 哲嗣*; 藤田 全基*; 山田 和芳*
Physical Review B, 66(17), p.172509_1 - 172509_4, 2002/11
被引用回数:17 パーセンタイル:62.71(Materials Science, Multidisciplinary)ここ2,3年の間に、高温超伝導体における磁性と超伝導の相関を明らかにするために磁場中での中性子散乱実験が幾つか行われている。これまでに、ホールドープ型超伝導体LaSrCuOとその関連物質において実験が行われており、静的磁気秩序が磁場中安定化し、磁気散乱強度が増加することが報告されている。これは、磁束により超伝導が破壊されている領域を核として静的磁気秩序が発達すると考えられている。これは、磁束格子とスピン揺動の相互作用を意味する。一方、電子ドープ型超伝導体においては、大型で良質な単結晶が得られなかったために、未だ磁場効果の実験がなされていなかった。われわれは大型で良質なNdCeCuO単結晶を育成し、磁場中での中性子散乱実験を行った。しかし、磁場中で静的磁気秩序に対する効果は観測されなかった。バルクの超伝導が破壊される臨界磁場を越えても磁場効果が見られないという事実は、ホールドープ型と電子ドープ型で磁性と超伝導の相互作用が異なっていることを示唆している。これは、LaSrCuOにおけるスピン揺動の研究に対して重要な情報を与えるのみでなく、超伝導発現機構を解明するうえでも重要である。